年末に『袋小路の男』を読みました。
前から気になってたのですが、「おすすめ文庫王国2008年度版」で、恋愛小説部門の第1位になっていたのをきっかけに読んでみました。
『袋小路の男』は、主人公、大谷日向子が、高校の先輩、小田切孝を、出会ったその時から、大学に進学して社会人になっても、12年間ただただ想い続けるせつない片想いの物語です。
絲山秋子さんの本は初めて読みましたが、文章表現がとても素敵です。1文1文の区切り方が端正で、行間の広さと相まって詩的な感じがします。例えばこんな感じです。
出会ってから十二年がたって、私達は指一本触れたことがない。厳密にいえば、割り勘のお釣りのやりとりで中指が触れてしびれたことがあるくらい。手の中に転がりこんできた十円玉の温度で、あなたの手があたたかいことを知った。
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相手を一途に思っているときは、傍から見ると些細なことでも、とても大切なできごとになります。それがよく表れた、とても美しい文章だと思います。
私の中で、あなたの最後の映像は、キリストみたいに長い髪で、浴衣を着て悲しんでいるあなただったから更新したかった。そうしないと、自分がどんどん壊れていくような気がした。
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これなんか、すごくよく分かります。好きな人の傷ついた姿は、想像以上に自分にとって大きなダメージとなるのは。
日向子が想い続ける小田切は、彼女に振られてベランダから飛び降り、怪我をして入院し、日向子に毎週末大阪から東京まで見舞いに来させ、なのに退院したら会いに来なくてもいいというような男です。こんな男のどこがいいんだろうと思いつつ、いまいち小田切の実像がつかめません。
そこで(かどうかは分かりませんが)、この本には、『小田切孝の言い分』という作品も収録されています。こちらは『袋小路の男』を3人称の視点で焼き直した作品で、タイトル通り、小田切側の言い分も分かります。こちらを読むと、小田切にも人間味が感じられます。ずっと片想いでも、この付かず離れずの2人の距離感もいいなと思います。
最近恋から遠ざかっている私は、この本を読んで、恋が恋しくなりました。
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